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医療機関と高齢者施設における新型コロナウイルス対策についての見解 ― 感染症法上の類型変更を見据えて

医療機関と高齢者施設における新型コロナウイルス対策についての見解 ― 感染症法上の類型変更を見据えて

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高山義浩、太田圭洋、舘田一博、今村顕史、谷口清州、古瀬祐気、中島一敏 小坂健、前田秀雄、中山ひとみ、田中幹人、釜萢 敏、岡部信彦、脇田隆字、尾身茂

新型コロナウイルス感染症の発生から約3年が経過し、ウイルスの特性については多く のことが明らかになっています。

医療機関や高齢者施設における感染対策についても、手指衛生などの標準予防策に加えて、マスクを適切に着用することや十分な換気を行うことの有効性などが明らかとなっています。ただし、入院患者への面会制限や職員に対する行動制限、あるいはスクリーニン グ検査の実施範囲などにおいて、一部に混乱が生じていたり、過剰に行われたりすること があるようです。

今年の5月、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが5類へと変更される 予定となっています。しかし、位置づけが変更された後も、一定の流行が繰り返されるこ とが想定されます。このため、入院患者や高齢者など重症化リスクの高い人たちが集まる 医療機関や高齢者施設においては、施設内において感染が拡がらないよう対策を続けてい くことが求められます。

ただし、地域における医療・介護資源は限られています。医療や介護のニーズ全体に応 えていくためには、施設ごとに様々な工夫を行いながら、効果的かつ持続可能な感染対策 を見出していかなければなりません。患者や利用者の側もできるだけ対策に協力し、かつ 現実を踏まえて完璧さを求め過ぎないことも必要です。

高齢者など重症化リスクの高い方々は、ワクチン接種を最新の状態に保つことで、日頃 より感染によるリスクや感染を拡げるリスクを低減させておくことが必要です。そして、 医師が常駐しない高齢者施設においては、発症後の診断や治療の遅れが生じないよう、前 もって嘱託医師あるいは近隣医療機関と相談しておくことも大切です。

この見解は、医療機関や高齢者施設における対策のうち、とくに疑問が生じやすい場面 を想定して、医療や福祉、倫理など多分野の専門家の検討のもとに考え方のフレームを提 供するものです。それぞれの施設においては、個々の状況に基づいて最終的に判断するよ うにしてください。また、施設内における集団感染の発生時には、速やかに保健所へ連絡 するとともに、その指導に従うようにしてください。

A 医療機関と高齢者施設に共通する対策

問1 医療機関や高齢者施設において、日常的にマスクを着用する必要がありますか?

問2 医療機関や高齢者施設におけるエアロゾル感染対策はどのように行いますか?

はい、サージカルマスクを着用することが望ましいです。2023 年 2 月の時点で全国の

ほとんどの地域で感染者の報告が認められており、日本国内では流行が持続している状況にあります。

このため、基礎疾患を有する方や高齢者など重症化リスクの高い方々が集まる場所では、感染拡大のリスクを減らしていくためには、マスク着用に協力いただくことが望まし いです。

とくに、生活の場が異なる方々が集まる外来診療の待合室やデイサービスなどでは、ウイルスが持ち込まれやすくなっています。できるだけマスクを着用するよう、その 場にいる方々に促してください。

一方、個室や個人のベッド上など公共性の低い場所では、入院患者や入居者はマスクを 外して過ごすことができます。また、利用者の出入りの少ない入居施設では、共用スペー スであってもマスクを外して過ごすことは考えられます。

ただし、医療・介護従事者は常 にマスクを着用して業務にあたるようにしてください 1)。なお、医療・介護従事者であっ ても、周囲に人がいない場面など、マスクの着用が必要ないと考えられる場面について は、各施設の管理者において判断をすることができます。

なお、認知症や基礎疾患の状態などにより、マスクを継続して着用することが困難な方 がいらっしゃいます。これらの方々には体調管理により留意しながらマスク着用を強要し ないようにしてください。

エアロゾル感染対策の基本は、できるだけ室内での密集を避けることと、効果的な換気を実施することにあります。 病院の待合室や高齢者施設のデイルームなど、多くの人が密集しがちな場所では、この基本が特に重要です。施設内の換気は、機械換気を常時運転します 2)。CO2 モニターを用 いて、1000ppm 以下であることをこまめに確認するとよいでしょう。

人数が増えるなどして、機械換気では不十分と考えられるときには、窓開け換気を追加 します。部屋の2方向の窓やドアを開けると、空気の流れによって効果的に換気すること ができます。冬季や夏季には、室内温湿度に配慮しながら、窓開放の方法や程度を調節してください。

十分な換気効果が得られにくい脱衣所などの空間では、空気清浄機を活用する方法があ ります。

厚生労働省資料 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000618969.pdf https://www.mhlw.go.jp/content/000698868.pdf

問3 医療機関や高齢者施設において、訪問者の面会を許可することができますか?

はい、許可することができます。施設内への感染症の持ち込みは極力防ぐべきですが、患者や高齢者の面会を制限することにより、身体的・心理的・社会的な衰えをもたらす可

能性についても配慮する必要があります。ただし、地域における流行状況によっては、例えば感染対策を守ることが難しい子どもの直接の面会に条件を課すことは考えられます。

オンライン画面を活用するなど、面会方法を工夫しながら実現することも検討してください。 施設では、訪問者を受け入れるにあたって、訪問者に発熱や咳嗽などの症状がないことを確認してください。そして、訪問者は、施設内ではマスクを常に着用し、決められた場所でのみ面会することなど、施設が求める感染対策を遵守することで、できるだけ施設内 へとウイルスを持ち込まないよう協力してください。

なお、居住型施設などのプライベートな室内において、訪問者がマスクを外して入居者 と食事をしたり、孫を抱くなど触れ合ったりすることは考えられます。こうした面会の在 り方については、地域における流行状況を考慮しながら、施設として過度な制限をかけな いよう配慮してください。

問4 感染者の診療やケアにあたる際には、どのような感染対策が求められますか?

感染者もしくは感染が疑われる者の診療やケアにあたる際には、手指衛生など標準予防 策や、サージカルマスクの着用を遵守したうえで、エアロゾル曝露する可能性を考慮すべ き状況では N95 マスクを着用してください 3)。外来診療など短時間の接触であり、室内換 気が良好かつエアロゾル発生のリスクが低い状況では、双方がサージカルマスクを着用す ることにより感染リスクは低く抑えられていると考えられます 1)。

さらに、診療やケアにあたる方は、アイゴーグル、フェイスシールドなどにより目を保 護するようにしてください。一方、身体密着することがなければ、ガウンやエプロンなど は必要ありません。接触時には使い捨ての手袋を使用することが望ましいですが、速やか にアルコール消毒や手洗いができるのであれば必須ではありません。

施設内の感染者については、できるだけ個室または感染者を集めた部屋(コホート隔離) での療養を原則としてください。トイレも感染者専用とすることが望ましいです。さらに、 感染者のいる部屋は、ドアを可能な限り閉じておくとともに、機械換気が常時稼働してい ることを確認してください。CO2 モニターにより換気効果を確認することができます。と くに、咳嗽を認めていたり、喀痰吸引や口腔ケアを実施したりするときなどには、同じ空 間に他の患者や入居者がいないことを確認してください。

問5 医療機関や高齢者施設で感染者を認めた場合には、どのように検査対象を決定した らよいですか?

入院医療機関や高齢者施設において感染者を認めた場合には、所管の保健所とまずは相談の上、接触者の特定による検査または広範な検査のいずれかを選択します。

すべての接 触者を特定できない場合や感染の拡がりが想定される場合には、フロア単位など広範な検 査を実施します。なお、広範に検査を実施するときは、ワクチン接種の有無によらず PCR 検査を実施することが望ましいです 3)。抗原定性検査を選択する場合には、無症候者の感 染が見逃されやすいため、より疑わしい状況では繰り返しの実施を検討します 4)。

接触者の追跡や広範な検査で追加の感染者が認められない場合には、それ以上の検査は 求められません。一方、感染者が続けて発見される場合には、広範な検査を継続する必要 があります。

これらの対応については、医療機関や高齢者施設のみでは実施困難な場合があります。 5類へと位置づけが変更された後も、医療機関や高齢者施設における集団感染のリスクは 高く、いまだ対策を平時に戻すことは困難な状況が続いています。施設内における感染拡 大を抑え、高齢者の死亡を減らし、医療ひっ迫を回避していくためにも、これまで行って きた検査体制を維持していかなければなりません。このため検査費用の施設負担が大きく ならないよう、国や自治体による引き続きの支援が求められます。

問6 医療機関や高齢者施設で感染者を認めた場合には、フロア全体のゾーニングが必要 ですか?

基本的には必要ありません。ただし、フロア全体に感染が拡がっている場合には、確定 している感染者のみの専用フロアとして運用することも考えられます。

通常は、病室単位のゾーニング(室内をレッド、ドア周囲をイエロー、ドアの外をグリ ーン)とします。陰圧室である必要はありませんが、感染者のいる病室からエアロゾルが 廊下に流出しないようにドアを閉じておくとともに、病室の機械換気において排気が給気 よりも多くなるように工夫します。

問7 感染が確定していたご遺体からの感染予防は必要ですか?

感染者がお亡くなりになった場合には、接触による感染の広がりに留意する必要があり ます。その一方で、飛沫やエアロゾルが発生することは考えられず、基本的な手指衛生を 心がけることにより、通常のご遺体と変わらぬ対応でご遺族は最後のお別れをする時間を とることができます。これまで必要とされてきた納体袋の使用についても、適切な感染対 策を講じることで体液漏出のリスクが非常に高いと想定される場合を除いて不要とされて います 5)。

なお、お亡くなりになる直前に、気管挿管、喀痰吸引、心臓マッサージなどの医療処置 が実施されている場合には、同じ室内におけるエアロゾル感染リスクが高まっています。 ご遺族との対面の部屋を変えるか、十分な換気を行ってから入室いただくようにしてくだ さい。

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2023 年 3 月 8 日

問8 医療・介護従事者の旅行や外食について、制限を行う必要がありますか?

制限を行うべきではありません。日常における感染リスクは、家庭内を含めて多様であ り、ことさら旅行や外食におけるリスクを強調することは適切ではありません。

日々の生活のなかで感染しないように心がけることは、医療や介護の専門家として望ま しいことですが、それでも感染を完全には防ぎきれないという認識を職場や社会で共有し ていくことも必要です。医療や介護の業務にあたっては、患者や入居者へと感染を拡げな いよう、日頃より基本的な感染対策を遵守することが大切です。

そして、疑われる症状があれば仕事を休むことが極めて重要です。業務中でも疑わしい と感じたときは、現場を離れて症状と体温を確認するようにしてください。症状や発熱を 認めるときは、速やかに検査を受けるようにしましょう。ただし、検査陰性であっても否 定できないため、少なくとも症状を認めるあいだは仕事を休み、その後も1週間程度は周 囲への感染予防を心がけてください。

B 医療機関における対策

問9 発熱患者の外来診療については、他の外来患者と分ける必要がありますか?

はい、可能な範囲で分離するようにしてください。ただし、多くの診療所においては、 施設構造も含めた医療資源において様々な制約があるため、発熱患者と他の患者の動線を 完全に分離して診療を行うことは困難です。

換気を徹底し、発熱や咳嗽のある患者については時間的または空間的に分離するなど、 できる範囲でリスク低減を図りながら診療を継続することが必要です。なお、当面の間は、 発熱患者に限らず、診療所内ではサージカルマスクを着用するよう患者に促してください。 地域医療を守っていくためには、診療所ごとに様々な工夫を行いながら、効果的かつ持 続可能な感染対策を見出すことが求められます。日本プライマリ・ケア連合学会では、診 療所における感染対策の好事例を紹介しているので参考とすることができます 6)。

問10 新規の入院または転院患者に対するスクリーニング検査を実施すべきですか?

地域の流行状況により、医療機関ごとの判断でスクリーニング検査を実施することは考 えられます。ただし、検査陰性を確認してから転院させるよう、他の医療機関に求めない でください。

新規の入院または転院患者を受け入れる場合には、来院時および過去7日以内に発熱や 咳嗽などの症状を本人または同居者に認めないか確認することも大切です。認める場合に は、速やかに PCR 検査を実施し、検査陰性であっても疑い例として個室管理を原則としま す。

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2023 年 3 月 8 日

C 高齢者施設における対策

問11 新規の入所者に対するスクリーニング検査を実施すべきですか?

地域の流行状況によって、施設ごとの判断でスクリーニング検査を実施することは考え られます。ただし、検査陰性を確認してから退院させるよう、医療機関に求めないでくだ さい。

可能であれば、入所後5日間程度を個室で見守ることにより、施設内における感染拡大 リスクを減らすことができます。また、入所時および過去7日以内に発熱や咳嗽などの症 状を本人または同居者に認めないか確認することも大切です。認める場合には、速やかに PCR 検査を実施するか、抗原定性検査を行います。検査陰性であっても疑い例として個室 管理を原則とします。

問12 高齢者施設の職員を対象として、定期的な検査を実施する必要がありますか?

職員の感染を早期に発見し、施設内での感染拡大 を防止するため、行政からの支援や 要請がある場合には、職員に対する定期的な検査を継続することは考えられます。

ただし、地域における流行規模が小さい状況のほか、ワクチン接種を含めた施設内感染 対策が徹底できている場合、職員が体調不良時に速やかに仕事を休める就労環境が確立で きている場合などでは、定期的に検査を行う意義は小さくなります。

職員に対する定期的な検査は、施設内感染のリスクを減らしますが、基本的な感染対策 を代替するものとはなりません。実施すべきかについて、一律に決定することはできない ため、施設ごとに補完的な対策として総合的に判断してください。

問13 入所者に感染を確認した場合には、すべてに抗ウイルス薬を投与すべきですか?

軽症例の大半は自然治癒するため、一律に抗ウイルス薬を投与する必要はありません。 ただし、基礎疾患を有する方やワクチン未接種者など重症化リスクが高い人、すでに重症 化の兆候を認める人には、個別に薬物治療の適応について判断することになります 7)。

これらの治療方針については、介護従事者のみで判断することはできません。かかりつ け医や嘱託医などの判断を速やかに求めるようにしてください。必要な治療の遅れが生じ ないよう、相談体制を含めて、事前に医師と話し合っておく必要があります。

参考資料

1) 医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド(第5版).日本環境感染学会(2023 年 1 月 17 日)

http://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/COVID-19_taioguide5.pdf

2) Centers for Disease Control and Prevention. (2021). Ventilation in Buildings

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2023 年 3 月 8 日

https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/community/ventilation.html

3) Centers for Disease Control and Prevention. (2020). Interim Infection Prevention and Control

Recommendations for Healthcare Personnel During the Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Pandemic https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/infection-control-recommendations.html

4) U.S. Food and Drug Administration. (2021). At-Home COVID-19 Antigen Tests-Take Steps to Reduce Your Risk of False Negative Results. https://www.fda.gov/medical-devices/safety-communications/home-covid-19-antigen-tests-take- steps-reduce-your-risk-false-negative-results-fda-safety

5) 新型コロナウイルス感染症により亡くなられた方及びその疑いがある方の処置、搬送、葬儀、火葬等に 関するガイドライン(第 2 版).厚生労働省・経済産業省(令和 5 年1月6日) https://www.mhlw.go.jp/content/001033541.pdf

6) 診療所における効果的な感染対策の好事例の紹介.日本プライマリ・ケア連合学会(2022 年 11 月 28 日)

https://www.pc-covid19.jp/files/protocol/発熱等かぜ症状外来の効果的な診療方法についての工夫_公

開 02.pdf

7) COVID-19 に対する薬物治療の考え方(第 15 版).日本感染症学会(2022 年 11 月 22 日)

https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_drug_221122.pdf

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