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〜〜〜印象的だった内容〜〜〜
「『おまえたちは支配されてるのか?それとも命令してんのか?おまえたちは、前進してんのか、それとも後退してんのか?』そう言ってたでしょうが。それに対して、俺たちは、前進してるって言い切れますか?」
僕たちは感動したわけでもないけれど、口を閉じたままだった。しばらくして、みんなの意見を代表するような気持ちで僕はこう答えた。
「何とも言えないな」
そんなんだから駄目なんですよ、と西嶋はぶつぶつ言う。
「そういう考え方って、流行らないだろうに」
「流行りと好みは無関係ですよ」
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「悔しかったんじゃないの」
「笑われたことが?」
「というよりも、ボウリングができなかった自分自身が」
「自分を信じてるから?」
「北村だったら、絶対やらないでしょ、悔しくても」
「そもそも、悔しく思わないだろうね。ボウリングの点数が悪くても気にしない」
「わたしもそう。でも、じゃあ、何のことなら必死にやるのか、って思わない?結局さ、いざという時にはやる、なんて豪語している人は、いざという時が来てもやらない。西嶋はそれに比べて、どんなことも真剣勝負なんだよ、たぶん。言い訳しないで、逃げずに、克服しようとする」
「たとえ、ボウリングでも?」
「麻雀でピンフを上がるのも」
僕は、東堂の横顔を見る。前を向いたままで、すっと伸びた鼻と色気が漂う瞼が見える。
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「西島には、三島由紀夫の気持ちが分かるんだ?」
「そこまでして何かを伝えようとした、という事実が衝撃なんですよ。しかも伝わらなかったんだから、衝撃の二乗ですよ。別に俺は、あの事件に詳しいわけじゃないですけどね、きっと、後で、利口ぶった学者や文化人がね、あれは、演出された自決だった、とか、ナルシシストの天才がおかしくなっただけ、とかね、言い捨てたに違いないんだけど、でもね、もっと驚かないといけないのはね、一人の人間が、本気で伝えたいことも伝わらない、っていうこの事実ですよ。三島由紀夫を、馬鹿、と一刀画断で切り捨てた奴らもね、心のどこかでは、自分が本気を出せば、言いたいことが伝わるんだ、と思ってるはずですよ。絶対に。インターネットで意見を発信している人々もね、大新聞で偉そうな記事を書いている人だって、テレビ番組を作っている人や小説家だってね、やろうと思えば、本心が届くと過信しているんですよ。今は、本気を出していないだけで、その気になれば、理解を得られるはずだってね。でもね、三島由紀夫に無理だったのに、腹を切る覚悟でも声が届かないのに、あんなところで拡声器で叫んでも、難しいんですよ」
僕はそれから、三島由紀夫の声が誰にも伝わらなかったのは、国連が反対しようと、世界中の世論が非難しようと、大国が戦争を起こすのを阻止できないどうしようもなさと似ているな、とも思った。
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「バカニナレ?」急にそんなことを言われても、困ってしまう。
「北村とか鳥井みたいに賢い奴はね、先のことを考えすぎるんですよ。馬鹿になればいいんですよ。たとえば」
「たとえば?」
「目の前で、子供が泣いてるとしますよね。銃で誰かに撃たれそうだとしますよね。その時に、正義とは何だろう、とか考えててどうするんですか?助けちゃえばいいんですよ」
「助けちゃいますか」僕は圧倒された。
「たとえばね、手負いの鹿が目の前にいるとしますよね。脚折れてるんですよ。で、腹を空かせたチーターが現われますよね。襲われそうですよね。実際、この間観たテレビ番組でやってましたけどね、その時にその場にいた女性アナウンサーが、涙を浮かべてこう言ったんですよ。『これが野生の厳しさですね。助けたいけれど、それは野生のルールを破ることになっちゃいますから』なんてね」
「正しいじゃんか」と鳥井が言う。
「助けりゃいいんですよ、そんなの。何様なんですか、野生の何を知ってるんですか。言い訳ですよ言い訳。自分が襲われたら。拳銃使ってでも、チーターを殺すくせに、鹿は見殺しですよ」
「なるほど」と納得したわけでもないのに僕は応じる。
「なるほど」と他の三人もうなずいた。ここで反論しても意味がないことを、僕たちはすでに学んでいる。ただ、東堂が言った。「でも、チーターと鹿のどっちを救うべきか、っていうのは難しい問題だよね」
西嶋は少し悩んだ上で、「それはその時、可哀想に見えたほうですよ」と答える。
「主観的じゃないか」
「北村、残念ながら、俺を動かしているのは、俺の主観ですよ」