0.6%の奇跡。

うどんが好きなんです。スダチと大根おろしの。

それで育てていたスダチの木が丸坊主に。

気付いた頃にはアゲハ蝶の幼体は第3変態。殺すのも憚れる可愛らしさに、スダチには申し訳なかったのですが、暫くそのままに。

翌日には一本の枝に蛹が。身体を支える儚い命綱を切らない様に慎重に鋏を入れて、リビングに招きました。

アゲハ蝶の、卵から成虫へ無事に変態を遂げられる確率は1%を切っていて…、僅か0.6%。

因みにこちらはキアゲハではなく、ナミアゲハ。ナミは並、という意味で平凡で普遍的なアゲハ蝶という意味です。

幼虫は鳥に食われたり、食虫の強い虫に食われたり、幼虫のうちに蜂に寄生されて、体を喰われて蛹から出てくるのは蜂だったり。…残酷なんです、自然界って。それでも蝶は、殊更アゲハ蝶は美しい。

第2変態は鳥の糞に擬態してとても醜い。それでも愛おしくて、殺せませんでした。

蛹に変態しても、上手く羽化できない子はそのまま死にます。何度も、何度も、それを見て、カラカラに乾いた蛹を土に埋めました。

今年は幸運にも、2個体の羽化を見る事が出来ました。

スダチの葉だけを食べて、こんなにも美しい羽根。

人は、人間は、こんな美しいものは作れない。完全なる美。左右対称の、畏れさえ抱く様な繊細な美しさ。更にそれが命を宿して動いていることの畏怖。

リビングで羽化させた子は蜜を纏わせた指で誘い、外に放しましたが、その間も髪に留まったり首筋に留まったりと愛らしい子でした。

秋が近づいて、夕立が激しい。どうか、どうか、命を繋いで。

また会おうね、来年も。その先も。

カボス、ごめん。

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